先日完成しました。
この作品は、とある方が長らく勤務されていた職場を3月に退職され、その記念にということで桜をテーマにした額絵を制作することに。2か月かけて、先日めでたく完成。桜の季節はとっくに過ぎてしまい、梅雨間近ですが…やっとこさ、お届けできました。
下絵の段階で、ぶち当たった壁。
それは桜という題材がわりとはっきりとしたイメージを持たれてしまっている点。
例えば、色は淡いピンクというイメージ。季節は春。
ピンクから極端に外れた色味にしたりすると、それだけで桜として認識してもらいにくい。
色のイメージを脱することが許されないモチーフというのは、色が限定されるのでどうしても色数が少なくなったり、トーンが偏ったりしがちで、そうすると絵が寂しくなってしまうのです。
寂しいのを防ぐために他のモチーフと組み合わせることに。しかし、季節感がはっきりしている桜は「春」とセットで考えなくてはなりません。
調べたところ、桜とツーショットになっている動物で多かったのが、メジロ。ウグイスも考えましたが色が地味なので、今回はメジロをチョイス。メジロだけだと緑とピンクだけでまだ寂しいので、更にお友達を探す。すると、スズメも桜と一緒にいることが多い鳥だと分かりました。メジロとスズメの体格差もこじんまりしている者同士バランスが良さそうだったので、桜の仲間はこの鳥たちに決定。
さて、次は桜の分量、ボリュームをどうするかです。最初、結構なボリュームの桜を下絵の段階で描いていましたが、やはりピンクだらけでバランスが悪い。思い切って、鳥たちの頭上に桜をのせて、背景は花びらを中心にしました。これには、もう一つ理由がありまして、鳥たちが花見をしている感じにしたかったので、ヒラヒラと花びらが舞っている風にしたかったのです。
下絵を描きながら、だんだんイメージも膨らんで、満開の桜の下でお花見をするスズメがメジロに四つ葉のクローバーを渡すシーンが浮かびました。新しい世界に進もうとしているメジロへの祝福と幸運の祈りを込めてスズメがクローバーの贈呈式を行っていると、蝶たちが集まってきて賑やかな式典になり、桜吹雪も舞う。
お花見の季節は終わってしまいましたが、春が訪れる度に、この絵を眺める度に長らく共に過ごした仲間や大切な時間を思い出し、懐かしんだり、優しい気持ちになって頂けたら幸いです。